第9回ゲストトーク 岩瀬 大輔氏

日本の「普通」は世界から見ると普通ではない

「ハーバード流宴会術って知っていますか?初対面の人の名前を一度にたくさん覚えるのは苦手だったのですが、簡単に覚えるコツがあるんですよ」と言って、参加者の名前を一人ずつ聞いていく岩瀬さん。名前から関連付けられるタレント名やニュースなどを連想し「XXXな○○さん」と特徴付けることで、覚えた名前を思い出しやすくするとか。ユニークな関連付け方に笑いがこぼれ、参加者の緊張が解けたところで、グローバルな視点で日本人は世界に何を発信できるかお話し頂きました。

多様化した環境での学び

HBS(ハーバードビジネススクール)でMBAを取得した時、クラスメイトは2/3がアメリカ人、1/3は80カ国から集まった留学生。
バックグラウンドも投資ファンドや大手メーカー、コンサルティング会社など幅広い職種の出身者でした。
そんな多様化した環境の中でのディスカッションは視点も様々で、企業の労働倫理一つを挙げても「子供を労働力とするメーカーからは不買とすべき」という意見もあれば、インドのような貧困層の多い国から見れば「子供は労働力、むしろ働くことで人身売買から自らの身を守ることができる」という賛成意見もある。
環境が違えば一つの事象でも捉え方が全く異なることを実感しました。

日本の意外な強みとは

日本は全てのことがビジネスクラスです。どこに行ってもきれいで、液晶パネルで情報が流れているなど、技術やインフラのクオリティーが高いことも然りですが、特に行動・サービスのレベルが高い。挨拶をする、お辞儀をする、買い物をしていても挨拶・お辞儀のやりとりがある。普通に思っていても日本は実はとてもサービスレベルが高い国だと思います。また、皆さんが思っている以上に世界からの日本への関心も高いです。日本は超クール、超リスペクトされています!

HBS在学中にジャパンツアーを開催したら140人もの参加者が集まり、セブン-イレブン ジャパン・Sony・トヨタ・京都・宮島・広島など世界に誇れる文化に触れるツアーとなりました。安藤忠雄に代表される日本人建築家の建築や、おもてなしの精神、日本人の美的センスが活かされた衣食住全般は世界にアピールできるポイントです。

そういったツアー中でも団体行動ができ、時間を守って行動できるのは日本人だけなんですよ。また、日米リーダーシッププログラムという、各国の政官財・学者・軍など様々な分野で活躍するリーダーが参加する1週間の合宿プログラムで、日本の「宴会芸」を披露したところどの国の人にも大ウケで大変好評でした。「橋本聖子」「山手線ゲーム」「尻文字」「コール」どれも定番ですが自分を落として笑いを取るなんて、他の国ではないんですよ!おかげでそれ以降も会う度にコールをされましたが、人気者になって参加者とより親密になることができました。
日本は文化や技術の評価も高いですが、日本人が持つ「ソフトパワー」ってすごいんです!

語学力より「メッセージ力」 日本人もどんどん発信を

高齢化最先端の国

もう一つ日本が誇れることは、高齢化社会の最先端であることです。医療年金問題は一番困っている分、一番考えられ進んでいます。日本が今困っていることを話すだけで世界に対してはすごい情報になります
日本はGDP500兆円に対し国債1000兆円。年間税収42兆円に対し支出90兆円という赤字収支。内訳は地方拠出16兆円・教育5兆円・公共事業5兆円・・・医療年金にかかる費用は28兆円と支出に占める割合が非常に高い。デフレっぽくなるのも社会の活力が落ちている高齢化の影響です。

年金は誰がいくら払って誰がいついくらもらうのか?
医療の技術進歩により寿命も延びる一方、延命にかかる費用は医療費でカバーするのか?
完全自費にしたら貧乏人は死ぬしかないのか?
倫理的にはそんなことはできないが拠出元もないという問題を抱えています。高齢者用の家具の開発や旅行など、高齢者向けビジネスも進んでいます。こういった状況はまだ他の国では起こっていないことなので世界からの関心が高いのです。

言語を上回る熱意が人々を動かす

HBS時代、学級委員長選に出馬したところ対抗候補はテキサス出身者でした。もちろん彼はネイティブスピーカーなので語学力では勝てませんが、スピーチの内容は僕の方が筋が通っていた。周囲が意見をきちんと聞いてくれて見事に学級委員長になりました。人種やバックグラウンドに関わらずいいことを言っていれば受け入れてくれるんです。

また、ダボス会議(※1)のYGL(※2)という世界の経済・ビジネスに関係する政治家、学者、財界のトップが集まる場に出席した時も、僕の「ライフネット生命という当時非上場のまだ小さい会社」という肩書きを気にせず意見を聞いてくれたことで、より一層、語学や肩書きの垣根は不要だということを実感しました。保険業界の経営者のみのセッションではAIG会長・プルデンシャルCEO・スイス再保険CEOなど錚々たるメンバーが保険業界の現状を脱せない議論で煮詰まっているところに、「自分の若手起業家ネットワークを通して肌で感じるのは、今、世界が興味があるのは貧困・医療・気候変動・ソーシャルといった事象だということ。これからはもっと個やアントレプレナーシップを意識した保険を創っていくことが切り口になっていくのでは」と提案したところ大絶賛でした。

アイディアがあれば、伝えることができれば聞いてくれる!という自信につながりました。

文法なんてどうでもいい。語学力よりメッセージ力。自分なりの考えがあるか、伝えたいことがあるかどうかが大切です。今、英語を話す人は非ネイティブスピーカーの方が多い環境です。語学力がないから…と臆せず、どんどん世界にメッセージを発信していきましょう!

※1 ダボス会議
ジュネーブに本拠地を置く世界経済フォーラムがダボスで開く年次総会。各国から選抜されたおよそ2000人の参加者が1週間にわたり経済から文化まで幅広く語り合う。「世界の知性の集い」とも呼ばれている。
※2 YGL:Young Global Leader
40歳以下の若手が集う会。

松嶋啓介

松嶋啓介's EYE

昨年から様々なゲストと交流し、たくさん刺激を受ける機会を設けることができました。
そこで受けた良い刺激を咀嚼し、そこから先、実際に行動に移していくことが難しいことと思いますが、シェアしていけば必ず形になると思っています。

僕自身、自分の10年間を振り返ってみると、今まで自分の夢を追いかけてきましたが、
一人で追いかけてきたようで実は色々な人に支えられ、支持されたことで叶えられたことだなと思います。
夢は一人で叶えられないし、夢を実現するためには時に犠牲にしなければいけないものもあります。
自分が抱えている問題もあるでしょう。それを恥ずかしがって言わないのではなく、気兼ねなくお互いに共有し助け合える環境を作って、どんどん話していきましょう。
Facebookでも77年会のページがありますし、様々なツールを積極的に活用して一緒に明るい未来、明るい日本を創って行きましょう!

岩瀬 大輔(いわせ・だいすけ)(ライフネット生命 代表取締役副社長)

1976年埼玉県生まれ。1998年に東京大学法学部を卒業後、ボストン・コンサルティング・グループ、リップルウッド・ジャパン(現RHJインターナショナル)を経て、ハーバード経営大学院に留学。同校を日本人では4人目となる上位5%の成績で卒業(ベイカー・スカラー)。
2006年にライフネット生命保険の設立に参画。2009年2月より現職。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2010」選出。日経ビジネス「チェンジメーカー・オブザイヤー 2010」受賞。

●過去のゲストスピーカー

マーク・パンサー 無我夢中で駆け抜けたMTVの日々。小室哲哉氏との出会い。

第29回ゲストトーク マーク・パンサー氏
モデル、俳優、ミュージシャン、DJ

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「気づいていない課題」がヒットに繋がる

第28回ゲストトーク 高岡浩三氏
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第32回ゲストトーク 長谷川 晋氏
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石川善樹 数字に表れる「食と健康」の関係

2016年プチ新年会 ゲストトーク 石川善樹氏
予防医学研究者、医学博士

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鈴木孝夫 日本人よ、“言葉”を外交の武器にせよ!

第27回ゲストトーク 鈴木孝夫氏
言語社会学者、慶應大学名誉教授

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過去のゲスト一覧